空家管理にプロの手を借りる
「空家の問題」は、地域の中に誰も住まない状態の「空家」が増加し、地域の生活環境や安心・安全を脅かすものとして認識されている問題です。
しかし、これは社会的な意味合いです。空家になっているとはいえ、家はすべて個人の大切な財産で、これを所有し、管理しなければならない所有者がいます。空家管理はそうした所有者にとっては、あまり人に頼ることのできない個人的な問題な問題であることが多いのです。
そこで、本投稿では、個人には少し荷が重いかもしれない空家の管理で、頼ることができるプロの存在について書くことにします。
<目 次>
(1)空家問題って何?
(2)空家の管理。具体的な内容は?
(3)プロが担う「空家管理サービス」とは?
(1)空家問題って何?
まずは、おさらいから行きましょう。
そもそも「空家」と言われるものは、誰も住まなくなった家のことを指しますが、今、全国に800万戸以上あると言われていまんす。この数は全住宅の7戸に1戸という割合なのだそうで、この統計が正しいとすれば、私たちは普段の生活の中でもたびたび目にしているということになります。
いわゆる“ゴミ屋敷”と呼ばれるような事例や、危険な状態のまま放置された家屋をイメージされるかもしれませんが、実はもっともっと(外から見た限りでは)普通の家屋が空家だったりするわけです。
空き家が生じた背景のひとつには、高齢化社会の進行があると言われています。これまで建設が奨励されてきた一戸建てが、その担い手の高齢化とともに空家化していっているというわけです。
そして、もう一つの要因が少子化。増えすぎた住宅を管理し、活用する人が少なくなってきているというわけです。
こうした要因を耳にするにつけ、空家の増加は社会全体の問題であって、所有している個人の問題ではないことは明らかです。しかし、だからと言って所有者が何もしなくてよいかと言えば、決してそうではありません。
個人の財産である以上、これを適切に維持管理することは所有者に課せられた責任ですし、所有者にとっても財産を適切に維持管理することは、個人の財産の価値を高めることになるからです。
(2)空家の管理。具体的な内容は?
では、「空家の管理」とは、具体的にどのようなことを指しているのでしょうか。経験のない方には実感がわかないかもしれません。
一般的には次のようなことが必要と言われています。
①ご挨拶などの近隣への気配り
②敷地内の整理・清掃
③建物(屋内外)の破損状況の確認と処置
④通気・換気
⑤通電・通水
⑥防犯に関わる措置
などです。
では、順をおって説明していくことにします。
①ご挨拶などの近隣への気配り
空家から離れたところに暮らしていると、その空家にしか気持ちが行かないかもしれませんが、その周囲にはいつも空家を見守ってくれているご近所さんがいらっしゃいます。ご近所さんは、日頃から空家を見守り、異常がないかを確認しながら、気をもみ、心配してくれています。
空き家の存在を誰よりも切実に、心配しているのは、空家の周りに実際に生活しているご近所さんなのかもしれません。
ご近所さんは、「誰かが来ていないか。入り込んでいないか。」、「どこか建物が傷んでいないか。」等など、いつも気を使ってくれている存在なのです。ですから、空家を管理していく上で「ご近所さんへの気配り」は特に重要なことなのです。だからと言って、「お金を包め」「盆暮れに贈り物を」などと言っているのではありません。そうした人がいてくれることに感謝しながら、たまに行った折には必ず声をかけ、感謝の気持ちを伝えるということなのです。
②敷地内の整理・清掃
敷地内の草や樹木はすぐに大きくなってしまいます。草や枝が伸びると樋を詰まらせて雨漏りの原因になって家屋の老朽化を進めます。また、敷地内に死角をつくるので防犯上も好ましくありません。いない間には雨や風の日もあったでしょうから折れ枝や枯れ葉、風で飛んできたゴミなどが、吹き溜まりとなって残ってしまうこともあります。
③建物(屋内外)の破損状態の確認・処置
空家のまま放置していると、知らず知らずのうちに家のどこかが破損してしまいます。そして、そうした小さな破損をほおっておくと、破損は思う以上のスピードで進んでいってしまいます。
特に気を付けないといけないのは、屋根(天井)と床です。屋根の破損は雨漏りを生じさせ、雨漏りは屋内をじわじわと腐らせていきます。また、床下も同様で、周囲から雨水が入り込んだり、通気が悪い状態が続くと、床周りの木材を腐らせ、時にはシロアリを招き入れたりします。
④通気・換気
③で書いたような建物の破損の一番の原因は「湿気」です。なので、空家を維持管理していく上で特に重要なことが通気をよくすることなのです。とはいえ、通期のために窓を開けたままにしておくことは防犯上は好ましくありませんから、適度な頻度で窓を開け、風を通すことが必要になるわけです。
⑤通電・通水
電気器具は、普通に生活してる限りはめったに故障などしないものなのですが、空家ではなぜか故障しがちです。全く使わない状態から突然動かされてびっくりするのかもしれませんが、久しぶりに家に行ってみて電気器具が使えないのは本当に不便です。そして、電気器具が動かないのは器具の故障ばかりでもありません。空家では漏電や断線も心配しなければなりません。
水道も同様です。水を流す前に取水弁(量水メーター)を見て漏水がないかを確認したり、蛇口から一定量の水を流して水道管に空気や汚れた水が溜まっていないかを確認する必要があります。
何かトラブルがあったとしても、簡単なことなら自分ですることができますが、水道や電気のトラブルとなると業者さんにお願いするしかありません。すぐに仕事をしてもらうことは難しくても、一度顔を合わせ、いつもそこにお願いするようにしておくことが賢明です。
⑥防犯に関わること
空家の郵便受けにはとかくいろいろなものが詰まっています。手紙は転送の手続きをとっていたとしても、日々配られるチラシなどは遠慮なく入れられ溜まっていきます。
心配なのことは、郵便受けにたまった手紙などが盗まれて個人情報が漏洩したり、溜まっていることで空家であることが心無い人に知れてしまったり、火を付けられるなどの犯罪行為につながってしまったりしてしまうことです。
(3)プロが担う「空家管理サービス」とは
今後も増加し続けるであろう空家は、ビジネスを広げていくにはもってこいのテーマです。近年、「空家管理サービス」に参入する大手事業者が出てきています。ここでは、プロが行う「空家管理サービス」の内容についてまとめることにします。
①近隣へのご挨拶
まずは近隣へのご挨拶。いつも空家を見守ってくれているはご近所さんへ挨拶することで、不在の折の情報が得られます。例えば、「何日か前に、誰かが来ていた」とか、「先日の台風の折、○○が音をたてていた」とかと言ったことです。また、ご挨拶をしておくことでご近所さんに「管理している」ことが伝わり、安心していただくことができます。
②敷地内・建物(屋内外)の破損状態の確認・処置
敷地内に散乱したゴミなどの清掃とともに、建物周辺に建物の一部が落ちていないかどうかなどの確認をします。建物の破損個所周辺には必ず何かが落ちています。落ちているものを掃除するだけではなくどこから落ちてきたのかを確認することで、建物の破損状況が把握できます。
また、各部屋をじっくりと確認しながら回り、窓やドア周りでは鍵が確実に施錠されているかどうかや、ガラスの一部が割られていないかなどを確認します。
③通気・換気
住宅を快適に維持するために特に重要なのが通気をよくすることです。そして、空家で一番不足してしまうことがこの通気。管理に訪れた時間だけでも窓を大きく開けて通気します。
④通電・通水
電気・水道なども確認のため、すべて灯し、流してみます。
⑤防犯に関わる措置
郵便受けに入っている郵便物やチラシなどを取り除きます。家を離れる前にはもう一度戸締りなどを確認するとともに、近隣に声をかけて帰ります。
以上のような作業を、月に1回、1時間程度、係員が実際に家まで行ってやってくれた上で行い、その結果を報告してくれるのが「空家管理サービス」です。
こうした空家の管理は、「自分の財産なのだからやるのが当たり前」と言われても、一人でやるのはすごく大変なことです。最初は少々無理をしながらなんとかやったとしても、到底長続きされることはできません。
そこで、自分ではすることが難しい、続けることが困難なことについては、プロの手を借りてみることを検討されてみてはいかがでしょうか。