空家になってしまった実家の管理

空家になってしまった実家の管理を始めるにあたって気を付けたいこと

 故郷を遠く離れていらしていると、何かと故郷の実家のことは心配ですよね。私も、生まれ故郷を遠く離れ場ところに暮らしています。いつも実家(故郷にある家)のことは気になっているのですが、自分にも仕事があり、家族があり、家がありますから、それらを投げうってまでという訳にはいきません。

 今はまだ年老いたとはいえ母が暮らしているので、日々の管理まで心配する必要はないのですが、これからのことを考えて、心の準備だけはしておかなければと考えるようになってきました。

 私が暮らしている周りにも、同じような事情の家は結構あるようで、そんな「空家になった実家事情」を探ってみることにしました。

<目 次>
(1)実家が空家になるパターン
(1)空家になった実家への対処法
(3)空家は不良資産か?
(4)空家で問題になること
(5)始めるにあたって気を付けたいこと


(1)実家が空家になるパターン

 実家は、地方出身者でなくても、親元から独立して暮らす家族には必ずあるものではないでしょうか。「実家」は、両親が長く暮らし、自分も生まれてからある年齢までは過ごし、独立してからもお盆やお正月には帰省した思い出深い家です。

 実家が空家になる状況はといえば、
・長く暮らしていた親が不幸にして亡くなってしまった。
・年老いた両親が病院に入院したり、介護施設などに入居することになった。
・年老いた親を子どもが引き取った。
などが一般的な事情ですが、中には、
・妻の実家を妻が相続することになった。
なんてこともあるようです。

 こうした事情。どれも家族にとっては一大事ですから、空家になった実家にテキパキと対処するなんてことはどだい無理な話なのかもしれません。やはり心の準備だけはしておかなければなりません。


(2)空家になった実家への対処法

 落ち着いて考えてみても、空き家になった実家への対処として考えられることはそんなに多くはありません。

 ①売却する。
 ②賃貸する。
 ③リフォームや建て替えをして使う。
 ④仕方なく時間をつくって管理をしながら、空家のままで所有する。
くらいのもので、選択肢はそんなに多くはないのに、いざ決めようと思えばどれも一大決心が迫られます。

①売却には、まず心情的な抵抗感が大きい

 実家には小さいころからの思い出が詰まっています。そうした思い出の元となる品々が所狭しと置かれていることも多く、簡単にそれらを断ち切ることはできません。想い出の品々を引き取ろうにも、自分の家にもそんな余裕はありませんから。特に、お墓や仏壇の行き場が大きな問題になってきます。

 そして、最近まで両親を見守っていてくれた近隣の眼が気になりますから、「買ってくれるのであれば誰でも」とか、「売ってしまったのだから自分には関係ない。」と割り切ることはできません。

 さらに、「将来、ひょっとすると自分で使うかも」とか、「ひょっとすると土地の値段が上がるかもしれない」なんて考えるようになると、売却することへの抵抗感はどんどん大きくなっていきます。

 実家を売却することには大きな抵抗感が付きまとうのです。

②賃貸は不安の種を増やす?

 では、売らずに誰かに借りてもらおうということになっても、借りてくれる人の心配は売却するのとそんなに大きく変わりません。

 加えて、「家賃は滞納されないだろうか」とか、「いざ必要になった時に出てくれるだろうか」とか、かえって心配事が増えたという声をよく聞きます。

 このことは、実家から離れているところに暮らしているとなおさらなのではないでしょうか。

③リフォームや建て替えには大きな資金が

 リフォームや建て替えには多くの資金が必要ですし、当然家族の理解が必要です。自分の想いだけではできないことなのです。下手をすると、自分一人が実家で暮らすことになってしまいます。

④消去法的に考えた結果、自分で管理する

 と、消去法的に考えた結果、仕方なく自分で所有し、無理をしながら管理することになってしまう。これが一番多い事例なのではないでしょうか。


(3)空家は不良資産か?

 さて、ネット「空家」を検索してみると、「空家特別措置法」のことが多く書かれていて空家所有者の不安を煽ってきます。まるで、“空家は不良資産”と言わんばかりに。

 確かに地域の空家の問題は、それぞれの地域にとって大きな問題であることは間違いありません。しかし、空家となった故郷の実家が突然に「特定空家」に指定され、固定資産税がそれまでの6倍にもなり、突如行政によって取り壊され、後日解体撤去費が請求される、などということは絶対にありません。こうした事態に至る前には、必ず近隣の方から声がかかったり、行政から改善についての相談・指導があります。法律ができたからといって善意の所有者が不安になる必要はないのです。

 たとえ空家になっているとはいえ、実家は両親が作り上げ、引き継いだ大切な財産であり、適切に管理していけば老後の暮らしを豊かにしてくれるものです。決して“不良資産”等と考えるべきではありません。


(4)空家で問題になる事

 とはいえ、空き家を放置しておくことは、社会的に許されない状況になってきていることに間違いはありません。「不動産の管理は所有者の責任の下行われるもの」。これは日本においては不変の原理原則ですから、自分が所有者でいるうちは、自ら適切に管理していかなければなりません。空き家となった実家から離れて暮らす自分にとってはたまに気になる程度だったとしても、近隣に生活する人々にとっては毎日のことですから、その切実さは比べようがありません。

 では、空家を放置しておくことは、どんな問題を生むのでしょうか。一般的には以下の3点が言われています。

まず最初は、地域の生活環境の悪化

 空家から悪臭が発生したり、白アリの住処となって、近隣にまで悪影響を与えてしまうことです。悪臭の原因には、敷地内の果樹の腐敗、ごみの不法投棄、雨漏りなどによる家財の腐朽やカビの発生、小動物の住処となることによる排泄物や死骸などが挙げられています。

二つ目は、老朽化による景観の悪化や危険性の増加

 老朽化して屋根や壁などの一部が破損して落下したり、植物が繁茂して近隣にまで伸びたりすることです。こうなると、周囲を通行する人に危険が及ぶだけでなく、周囲の景観の悪化を招きます。

三つめは、治安・防犯上の懸念の増加

 空家を狙った空き巣や、勝手に入り込んで住居にする人が現れたり、そうした人が暖を取るために炊いた火によって火災が発生したりといった懸念です。

そして、“負のスパイラル”に

 そして、こうした問題が大きくなっていくと、応急的な対処はできなくなって、大きな費用を要する根本的な解決策が求められるようになります。所有者も余裕(金銭的・時間的)があって残しているわけではありませんから、対処に行き詰ってしまいます。

 このような適切な解決策を遠のかせてしまう“負のスパイラル”に陥ってしまう訳です。先に上げた「特定空家」は、実はこうした“負のスパイラル”に陥ってしまった事例と言ってもいいと思います。

放置は財産の資産的価値を貶めることにも。

 上に上げた問題は、すべて空家がある近隣に悪影響を直接的に与えています。遠く離れたところに暮らす所有者には関係のないことのように思われるかもしれません。しかし、空家を放置しておくことは、自分にとっても、自らの財産の資産的価値を貶め、不良資産化させているということを認識しておく必要がありそうです。


(5)管理を始めるにあたって気を付けておきたいこと

  そこで、どんな対処方法を選択するにしろ、当面の間は、自らの手で適切に管理をしなければならないということになります。それも、問題が大きくなる前に、できるだけ早く始めるにこしたことはありません。

 たとえ空家になってしまっているとはいえ、「家」は所有者の大切な財産です。ですから適切な管理によって、その資産的価値を維持し、より高めていくことは、所有者にとっても無意味なことではないはずです。

 そこで提案したいのは、当面の方向性を、できるだけ具体的な言葉で決めておくということです。

例えば、
・自分が定年退職を迎えるまでは、老朽化が進まない程度に、管理をしていこう。
・年に1回、夏休みには数日実家で過ごし、その間にできることをしよう。
・少し時間はかかってもできるだけ高い値段で売って現金に換えよう。
・できうる限り早期に売却してすべてを終えたい。
といった具合です。

 このように、当面の方向性を定めれば、人の声に惑わされることなく、やるべき管理やその優先順位が決めやすくなります。

 それなりの価格で売却しようとすれば、資産価値を下げない程度には管理を続けなければなりません。当然、その間の管理に要する経費も考慮した価格で売却することになるでしょう。

 早期に処分したい場合には、早速に地元の不動産業者に相談すべきです。そして、相手が決まるまでの間で、家の中にある遺品などの整理を行った方がはるかに時間とお金が有効に使えます。

 自ら管理する場合でも、生活をしていない実家の管理に使える資金や時間が限られてくるのは当然です。許される時間やお金の中で何ができるかを考えていけばよいのです。

 愛着のある故郷の実家を管理していく勇気が湧いてきましたか?とはいえ、一人ですべてをやるのは難しい事です。自分ではやりきれない。大変だと思うところは、少々お金がかかってもプロにご登場願うことが得策です。


 空家になってしまった実家の管理で気を付けたいこと。それは、
「問題を先送りせず、当面の方向性を具体的に決めること」
そして、
「自分で無理をし過ぎず、頼めることはプロに任せる」
ってことなんです。