年老いた両親と離れて暮らしている人は多いですよね。そして、そんな人たちにとっての一番の心配は、離れて暮らす両親の暮らしです。そして、両親が歳を重ね(同じく自分たちも歳をとる)、不幸にして連れ合いを失くしたりすると、心配はどんどん募っていきます。
こんな心配。仕事のために都会に住んでいても、自ら田舎暮らしをしていても同じです。私も、二年前に実家にいた父が亡くなり、実家に母が一人で暮らしています。そんな離れて暮らす母の見守り体験を書くことにします。
母が一人住まいに
一昨年の正月、父が突然に逝ってしまいました。歳が歳(89歳でした)なのでそのこと自体は仕方のないことで、長患いもせず、安らかに、そして最期まで自分が建てた家で母とともに過ごせたことは幸せだったんじゃないかと思っています。
しかし、その一方で、残された母は父がいなくなった家に、一人で暮らさなければならなくなりました。母にとって、人生の大半を共にしてきた父の存在はもちろん大きかったはずで、父が亡くなってからの気の落としようは傍に居ても可哀そうになるほどでした。
母は父の葬儀が終わるとすぐに胆管結石で入院することになり、四十九日の法要にも出られない程の状態に。父の手前我慢し続けていたのでしょう。集中治療室に横になった母はやつれ、やせ細って「私もそれほど長くはなさそう」などと言い出し、見舞いに行った私たちまで「心の準備をしないといけないのかも」なんて考え出すくらいでした。
しかし、手術のかいもあって、父の四十九日を終え、初盆の準備を考え出した頃には、母も自分で動けるまでに回復してきました。
そもそもの家族構成
そもそもわが一家は、両親と二人の息子という家族構成でした。サラリーマンだった父は自分の苦労を教訓に「大学を出て大きな会社に入れ」というのが口癖でした。そんなこともあって、息子二人はそれぞれ父の教に忠実に、故郷を出て都会の大学へ進み、そのまま都会で会社員となりました。
とあっさり書きはしましたが、その間には大学受験に失敗しての浪人生活。苦労して入った大学では就職が決まらず留年。やっと決まった就職先も自分には合わないと転職。と、なかなか一人前にならない息子たちのために、両親は長い期間つつましやかな生活を強いられていました。
そして、自分が家族を持ってからは、忙しさにかまけてなかなか実家に帰れませんでした。父にも母にも、なんて申し訳ないことをしてきたんだろうと思うのですが、父には今からでは何もしてあげられません。その分母親には孝行を返したいと思うのですが・・・。
父が亡くなってから1年間は、四十九日、初盆、一周忌、そして母の病気に遺産相続手続きと、毎月のように実家に戻る必要がありました。母の様子を自分の眼で見守ることができたのは良かったのですが、息子二人は故郷を遠く離れて暮らしているせいで、何もしてあげられることはありません。行事ごとに集まってくださる親類たちのありがたさが身に沁みました。
遠くから親を見守るためにやっておきたい事
ちょっと話はずれますが、何度か母のための帰郷を続けるうちに、遠くから親を見守るためにやっておくと便利なことがいくつかわかりました。
例えば、
健康保険証や介護保険証のコピー
通院している医療機関や主治医の名前
服用している薬の名前や内容
重要書類や通帳・印鑑のありか
公共料金や水道光熱費の支払い方法
普段親しくしている親類や友人の連絡先
日常的な買い物の場所
使用するタクシー会社 などなど
こういう分野では、何しろ息子では役に立たないことも多いのですが、かといって妻にそれをさせるのはもっと大変です。年寄りはわがままになることが多いので、その面倒を嫁にさせたのでは争いの種をまいているようなものだからです。我が妻は良くやってくれましたけど。
母の不安を解消したい
そんな忙しい一年を過ごすうちに、一人暮らしとなった母も幸いにして健康を取り戻し、炊事・掃除・洗濯といった普段の暮らし大きな不自由なくできるようになって、普段の暮らしを取り戻していきました。もちろん、買い物など一人の外出もこなせるようになっていました。その一方で「一人でいるのは寂しく、恐ろしい」と言い始めたのです。
かといって、息子たちもそう度々には実家に戻ることはできません。二人の息子にとって一番の気がかりは、一人の母が突然に倒れでもしたらどうしようということでした。多分そんな事例が一番多そうだし、母も病気をしたばかりでしたから。
しかし、母の心配事は、
「家にいると誰かが入ってこないだろうか。」
「電話がかかってくると、オレオレ詐欺ではないか。」
「外出から帰って来た時、見知らぬ人が家にいたらどうしよう」
なんてことで、私たち兄弟の想像とはかなり違った内容でした。
なんとか母の不安を解消してあげたい。少しは、そばにいていられない罪滅ぼしがしたい。という訳で、母が一番心配しているセキュリティを主眼として、ホームセキュリティ(見守りサービス)を取り入れる相談を兄弟でしました。
ホームセキュリティ導入と母の安心感
「ホームセキュリティ」は、大手警備保障会社が提供している個人住宅向けの警備保障サービスです。警備保障と言えば、公共施設やビルと言ったイメージがありましたが、最近はすごく財産がありそうな豪邸家だけでなく、転勤などによる長期の留守宅と言った普通の個人住宅に向けたサービスが行われています。
そして、そうした普通の個人住宅の警備から派生したサービスとして、お年寄りだけになった世帯の見守りをしてくれるところもあるのです。まずは、そうしたサービスを行っている警備保障会社に依頼することにしました。
母も最初のうちは「警備員とはいえ誰ともわからない人が家に来るのは心配。」「機械の操作をしなければならないのは面倒。」「費用が多くかかりそう。」などと心配をしていましたが、
実際にサービスを体験すると、機会の操作も外出・帰宅時や就寝・起床時に限られていましたので、すぐに慣れてくれました。最初のうちは警備のセットや解除にてこずったり、誤操作をしてしまったりと、何度か警備員さんの手を煩わせたようですが、かえって担当してくれくれる警備員さんとはすぐに顔見知りになりました。そして、費用も心配したほどではありませんでした。
離れて暮らす兄弟にとっても、何かあればすぐに駆け付けてくれる方がいるというのはとても安心です。それも親類などにお願いするのではなく、少しばかりのお金で仕事として行ってくれる方がいるのは大きな安心です。さらに、ホームセキュリティーと連動した携帯アプリがあって、母が警備をセットしたり解除したりするごとに、携帯に時間が表示されるサービスもありました。
朝起きて警備を解除する。外出する。帰宅する。夜戸締りをする。そんなひとつひとつの動きが、離れた場所にいる私たち兄弟も携帯の画面で見ることができるのです。「今日もいつも通りに起きたな。」とか、「今日は出かけたな。買物かな。」とか、遠く離れた場所にいてもわかるのです。このアプリ、誰が操作したかもわかる仕組みになっていて、「あれ、今日は兄貴が家に帰ってるのか。」なんてこともわかってしまいます。
母が外出から帰ったタイミングで電話してみると、「家に戻ったの分かった?」「見てくれているの?」とかなり満足げで、母にとっても、自分がした操作が兄弟に伝わっていることは安心感につながっているようでした。
そんな訳で、母が自分の力で動くことができるうちは、このサービスで見守っていくことが出来そうで、兄弟ほっとしているところです。